こんにちは。社長に経費削減の話をしたらイラッとされたイノタスです。
今回は「役員賞与」についてのお話です。
先日、社長から「今期黒字ならみんなにボーナス払おうと思ってるんだけど、俺ももらえるの?」と聞かれたので、「もらえなくはないですけど、社員と同じタイミングでは無理ですね」と答えたところ、「いつならもらえる?」というやり取りがありました。
前回書いたように、社長には"役員報酬の支給ルール"を説明した後だったので「なんで?」とはなりませんでしたが、「どうやったら、いつもらえるか」について説明しました。
では、「役員賞与とその支給方法」について解説していきます。
役員はボーナスをもらえない!?
「役員賞与」とは、その名の通り役員が受け取る賞与のことですが、前回の記事に書いた役員報酬と同様に、支給には一定のルールがあります。
なので、社長(役員)はボーナスをもらえないわけではないですが、利益操作(節税)目的の手段とならないように、法人税法上のルールが設けられています。
役員報酬・賞与の支給ルール
役員報酬と役員賞与の支給には、以下のルールがあります。
【役員報酬の支給ルール】(前回のおさらい)
- 定期同額給与:原則として1年間毎月同じ金額を支払い、増減できない
【役員賞与の支給ルール】
- 事前確定届出給与:賞与を支給するには事前に税務署へ支給時期と支給額の届出が必要
社員の場合、会社の業績や個人の成績によってボーナスや業績給などをもらえますが、役員の場合は、事前に決められた期間・時期に、事前に決められた金額しかもらえないようになっています。
「事前に決められた」としておくことで、会社の業績に応じて支給の金額を調整するというような利益操作を防いでいるわけです。
決められてないのに支給したらどうなる?
上記のルールを無視して役員に賞与(臨時的な報酬)を支給した場合、その全額が経費として計上できなくなります。
例えば、臨時的な報酬として役員に100万円を支給した場合、経営成績や財産状況を示す財務会計(損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書)では経費として▲100万円となりますが、税務会計(法人税法に基づいた会計)では経費にならないため、利益を減らすことができません。
つまり、支給した100万円が"あるもの"として法人税額が計算されることになります。
(なお、法人税法上で経費として認められないものを「損金不算入」と言います)
役員賞与をもらうには?
法人税法上も経費(損金)となるように役員賞与を支給するには、先述した「事前確定届出給与」のルールに従う必要があります。
■ 事前確定届出給与のルール
- 株主総会を開き、役員に支給する賞与の金額と支給する日付を決めて議事録を作成
- 「事前確定届出給与に関する届出書」を所轄税務署へ提出 ※下記の提出期限参照
- 事前に決定された金額を事前に決定された日に支払う
※届出の提出期限:下記のどちらか早いほうが提出期限になります。
- 上記の株主総会開催日から1ヶ月以内
- 決算日から4ヶ月以内
なので、3月末決算の会社が5月25日に株主総会を開き、役員賞与を決めた場合、
- 株主総会開催日から1ヶ月=6月25日
- 決算日から4ヶ月=7月31日
どちらか早いほうが提出期限なので、①の6月25日までということになります。
金額と支給日に注意!
なお、事前に決定された支給金額と1円でも違ったり、支給日が1日でも違ったりすると、これも全額が損金不算入(経費にならない)になってしまうので、注意が必要です。
おわりに
前回書いた役員報酬の支給ルールと同様、役員賞与の支給についても利益操作(節税)目的の手段とならないようがっちりルールがあるので、支給を検討する場合は税理士に相談してください。
なお、所得税、社会保険料やキャッシュフローなどを総合的に見て、臨時的に役員賞与を受け取るよりも、同額程度を分割して毎月の役員報酬で受け取ったほうがいい場合もあるので、そういったシミュレーションも税理士にやってもらいましょう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございましたm(__)m