こんにちは。年1の胃カメラが憂鬱なイノタスです。
今回は会社の経費のお話しです。
先日、社長から「人間ドックを予約したから払っといて」と病院からの請求書を渡されたので、「経費では落とせませんよ」と答えたところ、「えっ!?なんで??」ということがありました。
社長曰く、以前の勤務先では「会社の費用で受けれていた」らしく、法律で実施が義務付けられている「健康診断」の一環として経費(福利厚生費)で落とせると思っていたそうです。
では、「人間ドックの費用は経費で落とせない?」について解説していきます。
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人間ドックの費用は経費(福利厚生費)で落とせない?
福利厚生費とは?
まず「福利厚生費」を簡単に言うと、"従業員が快適に働ける職場環境にすることを目的に会社が支出する費用"のことで、具体的な例として
- 健康診断
- 社宅
- 社員旅行
- 忘年会、新年会、歓送迎会
- 結婚・出産祝い、香典
- 常備薬、ウォーターサーバー
- 制服
などがあります。これらは、通常「福利厚生費」として経費で落とすことができます。
ただし、経費として認められるためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。
1.機会の平等性
「全従業員を対象として等しく公平に利用できるもの」という決まりがあります。なので、一部の従業員のみを対象としているような場合は、経費として認められません。
2.金額の妥当性
「社会通念上(常識的に)高額でなく、一般的にかかる費用の範囲内であること」という決まりがあります。(一部を除き)金額に明確な決まりがないため判断が難しいのですが、一般的に妥当な金額でなければ経費として認められません。
人間ドックの場合は?
では、人間ドックの検診費用はどうでしょう。
結論から言うと、上記2つの要件を満たしていれば福利厚生費として計上することができます。
健康診断の一環として、1.特定の者だけを対象とせず、2.検診の内容・金額が通常必要とされる範囲内であり、3.その費用が会社から検診機関へ直接支払われている場合は、福利厚生費として計上できることになっています。
以下、国税庁のサイトにもその旨の回答があります。
役員や特定の地位にある人だけを対象としてその費用を負担するような場合には課税の問題が生じますが、役員又は使用人の健康管理の必要から、雇用主に対し、一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断の実施が義務付けられていることなどから、一定年齢以上の希望者は全て検診を受けることができ、かつ、検診を受けた者の全てを対象としてその費用を負担する場合には、給与等として課税する必要はありません。
出典:国税庁サイト 質疑応答事例より
なお、「一定年齢以上の希望者は~」とあるように、対象者を年齢で分けるのは大丈夫です。
社長に「経費では落とせませんよ」と言ったのは?
わたしが「経費では落とせませんよ」と言ったのは、福利厚生費として認められる要件を2つとも満たしていなかったからです。
- 対象者が社長のみ:従業員は普通の健康診断
- 社会通念上高額:46万円(どんなドック!?)
ということで、社長には自腹で払ってもらいました。
ちなにみ、人間ドックの平均相場は3~4万円ほどですので、それ位の費用で例えば「40歳以上の希望者は全員受けれる」というような規定になっていれば、福利厚生費として計上できます。
所得税と法人税のダブルパンチ
今回のケースで、社長の「自腹」ではなく会社が費用負担した場合、その費用は福利厚生費として認められず「社長への給与」として課税の対象(社長の所得税が増える)になってしまいます。
さらに、会社側も社長(=役員)への"不定期給与"として「役員賞与」扱いとなり、役員報酬(定期給与)と違って法人税の計算上では経費として扱うことができなくなります。
つまり、所得税(社長個人)と法人税(会社)のダブル課税になってしまうため、社長には自腹で払ってもらったわけです。
社員旅行の費用が給与明細に載っていた

経費(福利厚生費)では落ちない"他の実例"を挙げてみます。
成績優秀者へのご褒美旅行
以前勤めていた会社には「成績優秀者へのご褒美旅行」という制度が毎年あって、わたしも何度か行かせてもらいましたが、行った翌月の給与明細を見ると「旅行に掛かった費用」がそのまま明細に載っていました。
つまり、成績優秀者="特定の者"だけを対象とした旅行だったため、社員旅行(福利厚生)ではなく「報酬(給与の一部)」として扱われていたのです。なので、その分「所得税」がガッツリと引かれ、実際の手取り額が普段より数万円少なくなっていました。
社員旅行の費用が福利厚生費と認められるには?
社員旅行についても、先述した2つの要件(機会の平等性、金額の妥当性)が基本になっていて、以下の3つの要件をすべて満たすことで、社員旅行の費用を経費(福利厚生費)扱いにすることができます。
- 4泊5日以内の旅行であること(海外旅行の場合は現地での滞在が4泊5日以内)
- 従業員の50%以上が旅行に参加していること(パートやアルバイト等も含めて)
- 1人当たりの旅費(会社負担分)が10万円程度であること
ちなみに、①と②については国税庁のサイトにその旨が記載されていて、③については明確な金額の規定はありませんが、過去の判例から10万円程度が妥当であると考えられています。
おわりに
最後まで読んでいただき、ありがとうございましたm(__)m